2020年12月22日 11:54 PM
ウェイトトレーニングと食事で体を作る
日本シリーズ4連覇を達成したソフトバンクについて,なぜ強いのかということが話題になっています.
ダルビッシュ有投手の見解
ダルビッシュ有投手はソフトバンクのフィジカルの強さを強調しています.
- 2005年の時点でソフトバンクは,ウェイトトレーニングの環境が整っていて,海外のものも含めて様々な種類のサプリメントが棚に置いてあり,すべて背番号が書いてあった.
- トレーニング,栄養,休養の3つが揃ってフィジカルは強くなるが,ほとんどのプロ野球選手は栄養と休養の意識が低すぎて,トレーニングだけ一生懸命やるから,疲れてパフォーマンスを発揮できない.
- ソフトバンクは2005年の時点で,トレーニングと栄養に関しては,間違いなく意識があった.これは他の球団ではなかった.
- ソフトバンクは2005年当時から斉藤和巳,小久保,松中選手など,皆がパーソナルトレーナーを付けていた.
- ソフトバンクの選手は投げていて体が強く感じた.技術じゃなくてフィジカルだなと思う部分がそこから来ている.
多村仁志氏の見解
多村氏が狭いと言われていた横浜スタジアムから一番広いヤフードームに行ったときに,完璧に打った打球がフェンス直撃になったケースが移籍1年目で10本以上あったそうです.
当時の秋山ヘッドコーチも初めて福岡に来たときに,ホームランが入らず,力が入って逆にスイングスピードが遅くなってホームランが入らなかったという経験をしたとのことです.
高木豊そのために,やっぱりウェイトだとかトレーニングはソフトバンクの選手っていうのは結構やってたの?
多村仁志凄かったです.
高木豊いや,当時のさあ横浜ベイスターズと移籍してトレーニング方法っていうのは全然ちがった?
多村仁志違いましたね.
高木豊どんな違いがあったの?
多村仁志僕が90年半ばに入団した頃っていうのは,トレーニングっていうと筋肉つけたら硬くなるとか重くなるって言われてた時代でしたから,トレーニング施設っていう所もみんなシャドーピッチングをしに行くのか練習を隠れる場所みたいな.
高木豊まあ,そうだよね.憩いの場だよね.
多村仁志そうなんですよ.で,そういう部分でベイスターズのその横須賀,2軍ですよね,施設があったんで,まあ器具もそんなでも高くない,昔から古いのがそのまま錆びて置いてあるみたいな感じだったんで.
高木豊そうだよね.
多村仁志まあ,それが移籍よりちょっとこう前ぐらいになったら,まあトレーニングするようにはなりましたけど,ホークスに行ったら,小久保さん,松中さんっていうのは凄い鍛えますし,秋山さんもトレーニングするんですよ.もう,筋力トレーニング.で,施設もすごい広かったですし,そこでやっぱりこう体作りっていうのは一番大事だよっていうのを言われて.
当時の僕がホークスに移籍した時の選手たちっていうのはパーソナルトレーナーを自腹で雇って,トレーニング施設でわちゃわちゃやるっていう.
高木豊それはベイスターズではなかったの? 雇うってことは.
多村仁志なかったです.まったくなかったですね.
高木豊やっぱ,自分に金をかけているっていうのが全然違うね.
多村仁志と思いますね.まあそこで向上心もあって,やっぱりいいものを出そうと思ったら,より一層こういいものを探し当てて,そこで自分に投資をするっていうことができるチームだったかと思いますね.
ダルビッシュ投手と多村氏ともに,フィジカルの部分を挙げています.多村氏がすごかったというくらい,選手はウエイトトレーニングをおこなっていたようです.
ウエイトトレーニング室にはあらゆる種類のサプリメントが並び,2005年当時からみんなパーソナルトレーナーを自腹で雇って専門的なトレーニングをしていたとのこと.
また,キャンプ中の食事も外食に行かなくてもよいくらい豪華で,体づくりをするための環境が整っていたことがソフトバンクの強さの一因として挙げられています.
ソフトバンクでは,技術を身につける以前に,ウェイトトレーニングと食事で体を作ることを第一としていることがわかります.
フィジカルの強さと技術の向上は別物
この動画を観た方は,野球が上手くなるためにはウエイトトレーニングが必要だから,ボディービルダーのような体をつくらなければならないと思われた方も多いと思います.しかし,体作りと技術の向上は別物です.
「野球選手にボディビルダーの筋力は必要か-特異性の原則」で述べたように,特異性の原則に則ったウエイトトレーニングであれば,投手の腕の振りのスピード,打者のスイングスピードの増大が期待できます.
ダルビッシュ投手に「体を大きくする」ということばが出ていることから,特異性の原則は考慮されず,ボディービルダー寄りのトレーニングであったことが推測できます.
もちろん,ボディービルダーのトレーニングでも効果は出ますが,特異性の原則に則ったウエイトトレーニングに比べるとその効果は小さいものになります.
ですから,体をつくることは大事なことですが,ソフトバンクの選手がウエイトトレーニングに力を入れていたことが強さの根本的な理由になることは考えにくいということです.副次的なプラス面として位置づけするのが適当です.
練習量がものすごかったという話も出ているので,むしろ特異性の原則に則った投げ込みや打ち込みをおこなうことで,投手のスピード,スイングスピードが増大したと考えることもできます.
合理的な動作ができている選手がどれだけいるか
たとえば,成績が低迷している打者がいるとします.この選手がソフトバンクを見習ってウエイトトレーニングに励み,栄養も十分に摂って大きな体を作ることに成功したら,パフォーマンスは向上するでしょうか.答えはNoです.
なぜなら成績が低迷している原因は打撃動作にあるので,いくら体づくりをしたところで打撃動作を改善しない限り,パフォーマンスは向上しないからです.
ソフトバンクは育成出身で活躍している選手が多くいますが,ウエイトトレーニングをしたから活躍しているわけではなく,動作の中に技術向上の裏付けがあるはずです.
つまり,チームの強さは投手,野手に合理的な動作ができている選手がどれだけいるかということにかかわってきます.
ソフトバンクには柳田選手のようにパフォーマンスが高い選手もいますが,「科学する野球」でも指摘されているように,残念ながら日本人選手よりも 外国人選手のほうが理にかなった動作でプレーしています.
日本シリーズも含めソフトバンクほど投打ともに外国人選手が成績を残しているチームは他にないのではないかと思います.