2021年6月14日 5:16 PM
バットを体の前に構えているための弊害
バットを体の前に構えていると,なぜパワフルなバッティングができないのか.まず,結論から申し上げますと,それは空手打ちができないからなのです.
この空手打ちについては,『科学する野球』の打撃篇で詳説しておきましたが,トップハンドの空手打ちは,写真①のように,後ろヒジをトップハンドより先行させなければいけません.それには,図⑧のように,ステップした前足が着地したときに,バックスイングのトップでフライング・エルボーであった後ろヒジを後ろワキ腹の前にかい込むことから動作を起こし,この時点では,手からバットを振り出そうとする意識を働かしてはダメなのです.
もしも,この時点で,手からバットを振り出すと,バットを後ろのタメることができず,アウトサイド・インのスイングになります.また,前脚をステップすると同時にバットを手から振り出すことは,前足を捻りの軸足として,前腰に捻りをいれ,腰から打つ体勢ができ上がっていないのに,バットを振ることになるので,手打ちというより手振りになりますから,パワフルなバッティングができなくなります.
そこで,写真②と③とを見てもらいますと,写真②はヘッピリ腰の構えであり,写真③は自然体の構えですが,どちらも体の前でバットを構えており,後ろ腰に捻りをいれていませんから,このような構えは打つ構えとはいえないのです.
打つ構えとして大事なことは,足もとから後ろ腰に捻りを入れることです.この捻りでタメた内部応力,歪み応力をいっきょにリリースしてこそ,そこに瞬発力が生まれるのであり,その力がフォワードスイングという運動をいっきょに爆発的に推進させるのですから,この捻りによる内部応力のタメがパワーの根源なのです.
引用元:科学する野球・実技篇 pp.21-23

図8:手から振り出すのではなく,フライング・エルボーで構えた後ろ肘をワキ腹の前にかい込む動作が必要
引用元:科学する野球・実技篇 p.22,図8,写真1

引用元:科学する野球・実技篇 p.23,写真2,3
引用文では,自然体,ヘッピリ腰で構えることの問題点として,①バットを体の前に構える,②後ろ腰に捻りを入れていない,を挙げています.
①バットを体の前に構えると,手からバットを引いてバックスイングすることになるので,肘よりも手が先行します.手が先行すると後ろヒジを後ろワキ腹の前にかい込むことができないため,写真①のように肘を先行させてバットを後ろにタメること,空手で打つことができなくなります.
②後ろ腰に捻りを入れていないと,内部応力,歪み応力がタメられないので,フォワードスイングを行うエネルギーが不足すること,また,前腰に捻りをいれ,腰から打つ体勢ができ上がっていないと,手振りになることが述べられています.
この②では,捻り,内部応力,歪み応力ということばが出てきますが,これらは村上豊氏の歪み理論のキーワードになっています.歪み理論は「科学する野球」の核となる理論です.
自然体,ヘッピリ腰で構えることによる問題点は,次のとおりです.
- バットを体の前に構えるので,手振りとなり,肘を先行させてバットを後ろにタメること,空手で打つことができなくなる.
- バットを体の前に構えると後ろ腰に捻りが入らないため,内部応力が利用できず,バットに加速度を与えることができない.