「科学する野球」では「空手打法」と「スナップ打法」が混同されている


2021年12月4日 10:32 AM

目次

「科学する野球」で説明されている打撃のスナップ動作①

 「科学する野球」の中にも打撃のスナップ動作を説明している箇所があります.

コックとヒンジの違い 
 ところで,このコックについて正しく理解されていない人が見受けられるので,「科学する野球」の打撃篇で述べておいたことですが,さらに説明を加えておきましょう.

 さて,手をコックするというのは,図㉒のように親指の背面のほうに手を折り曲げることをいいます.図⑳を見ていただきますと,その①は,バットをフックグリップで握ったボトムハンドをコックさせたものであり,その②はフックグリップで握ったトップハンドをコックさせたものであり,その③はフックグリップで握った両手をコックさせたものであるが,なぜこのように手をコックするかというと,図㉑を見ていただくとわかるのだが,トンカチ(金槌)でクギを打つとき,コックして構えた,その①のボトムハンド,その②のトップハンドとも,インパクトでそのコックをアンコック(コックをほどく)してやると,手首を支点にしてテコの作用がはたらき,トンカチの先端のヘッドのスピードが増幅されて,強打することができるからなのです.

引用元:科学する野球・実技篇,pp.46-47

 引用文の内容を簡単にまとめると,「インパクトでコックを解くと,手首を支点としたテコの作用によりバットのヘッドスピードが増幅されて強打できる」になります.

 「科学する野球」で使われるコックはゴルフ用語で,親指の背面のほうに手を折り曲げるという意味になります.構えで両手をコックすると,トップハンドは掌屈(手の平側に曲げる),ボトムハンドは背屈(手の甲側に曲げる)します.

 インパクトでアンコック(コックを解く)すると,手の振子が振られ,スナップ動作が行われます.投球のスナップ(背屈 → 掌屈)とは逆のスナップ(掌屈 →掌屈をほどく)になります.

 引用文では,図21-①,②でアンコック(コックをほどく)すると,手首を支点にしてテコの作用がはたらき,トンカチの先端のヘッドのスピードが増幅されて,強打することができるという説明になっています.

 しかし,アンコックしているのに,ボトムハンドは背屈,トップハンドは掌屈したままクギを打っています.

 また,手首を支点にしてテコの作用がはたらき,トンカチのヘッドスピードが増幅されるとありますが,力点,作用点がわからず,どのようにヘッドスピードが増幅されるのかよくわかりません.

「科学する野球」では,「空手打法」と「スナップ打法」が混同されています.

「空手打法」はバットの真ん中の板目で打つために板目と手を平行に握る打ち方で,図21のクギの打ち方は「空手打法」です.

 スナップ打法では,手の振子の振り幅を大きくする必要があるので,極端にいえば手の甲が投手に向くくらい手を起こさないといけません.

 スナップ打法ではトップハンドをかなり掌屈するので,柾目で打つということから離れます.

引用元:科学する野球・実技篇,p.47,図21-①,②

空手でクギを打つ=空手打法
手がクギと平行にならないとクギを強打できない
実際は空手で打つのではなく,バットの板目でボールを押し込む
引用元:科学する野球・打撃篇,p.34,図30
空手打法(アップスイング)
ボールの軌道は落ちてくるので,中心衝突(側面から見た)させるには少し上向きにスイングしなければならない
引用元:科学する野球・実践篇,p.194,図127

「空手打法」とは,バットの真ん中の板目とトップハンドの手を平行にして,柾目でボールを強打するための打法です.トンカチでクギを打つ場合,トンカチと手を平行に握らないと,クギを強打できません.

 スイングの軌道と手が平行になるので,アップスイングの場合,手が少し上向きになり,掌屈の程度も少し大きくなります.(図127)

「科学する野球」で説明されている打撃のスナップ動作②

 「科学する野球」の中に,テッド・ウイリアムズ選手の写真を使って,打撃のスナップがどのように行われているかが説明されている箇所があります.

 わかりやすくするため,次のように読み替えることをお勧めします.

  • トップハンドをコックする → トップハンドを掌屈(手の平側に曲げる)する
  • ボトムハンドをコックする → ボトムハンドを背屈(手の甲側に曲げる)する
  • アンコック → コックをほどく

 そこで,バッティングで実際にこのコック,アンコックがどのように行われているかを見てみましょう.写真⑬は,テッド・ウイリアムズ著の「バッティングの科学」(ベースボールマガジン社刊)に掲載されているものですが,その①では両手ともまだコックされており,②ではボトムハンドがアンコックされているが,トップハンドはまだコックされており,③では両手ともアンコックされ,両腕が伸びきっています.

 この②のインパクトで,トップハンドのコックをアンコックしないで,③でアンコックしているのは,固定されたクギを打つ場合は,図㉑の②のように,インパクトでアンコックして加撃しなければならないが,投球されたボールはクギと違って空中に浮動しているから,トップハンド側の前腕部と90度の角度を保たせたバットで,ボールと中心衝突させたとき,トップハンドをコックしていても,間髪を入れず,トップハンド側の腕をヒジから押し伸ばすと同時に,トップハンドをアンコックすれば,バットのヘッドのスピードを増幅することができ,ボールの力を押し戻すことができるからなのです.

 この③を見ると,両手とも完全にアンコックし,両腕を伸ばしきっても,手もと,両腕,両肩を結ぶと三角形になっています.この③のあと図㉓のように,バットを体の正面まで持ってきますと,写真⑭のようなフォロースルーになります.

 ここで気をつけなければならないことは,ボトムハンドの手の甲を空のほうに向け,トップハンドの手の甲を地面のほうに向け,まだ手もとを返さないで,打った後の“残身”を保っていなければならないことです.

引用元:科学する野球・実技篇,pp.47-49

 引用文の内容を写真,図に沿って説明します.

写真13-①

その①では両手ともまだコックされている.

 コックされているということは,

  • トップハンドが掌屈(手の平側に曲げる)されている
  • ボトムハンドを背屈(手の甲側に曲げる)されている

 ということです.

 上からだとわかりにくいのですが,ボトムハンドはそれほど背屈されていないように見えます.

 スナップ動作を行う際は,後ろ腕がメインとなるので,ボトムハンドの背屈については重要視しなくてもよいと考えられます.  

写真13-②

②ではボトムハンドがアンコックされているが,トップハンドはまだコックされている

 ボトムハンドの背屈がほどかれ,トップハンドの掌屈は維持されているということですが,上から見るとわかりにくいところがあります.

写真13-③

③では両手ともアンコックされ,両腕が伸びきっている

 トップハンドの掌屈,ボトムハンドの背屈がともにほどかれているということは,手首を支点とする手の振子のスナップが行われたことになります.

 後ろ腕が伸びているので,インパクト後,ボールを押し込んでいることがわかります.

 後ろ腕の動作がメインとなるので,後ろ腕を伸ばす動作が前腕を伸ばして,両腕が伸びていると考えるのが適当です.

引用元:科学する野球・実技篇,p.48,写真13-①,②,③

 引用文に,「この③を見ると,両手とも完全にアンコックし,両腕を伸ばしきっても,手もと,両腕,両肩を結ぶと三角形になっています.この③のあと図㉓のように,バットを体の正面まで持ってきますと,写真⑭のようなフォロースルーになります」とあります.

引用元:科学する野球・実技篇,p.49,図23
ランディ・バース
引用元:科学する野球・実技篇,p.49,写真14

 写真13-③で後ろ腕を伸ばしてボールを押し込むと,後ろ腕を伸ばす動作によって前腕も伸びることになるので,両腕が伸びて図23のように両腕,両肩を結ぶと三角形になります.ランディ・バース選手もきれいに両腕が伸びています.

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