2022年9月19日 6:53 PM
「科学する野球」に今から36年前に行われた日米野球のことが書かれているので,引用します.
日米野球はやらないほうがよかった
パワーだけの差に過ぎないのか
昭和61年(一九八六年)11月1日から9日にかけて,デーブ・ジョンソン・ニューヨーク・メッツ監督ひきいる米大リーグ選抜チームと,日本のセ・パ混成オールスター軍による日米野球が7戦行われ,その結果は米チームの六勝一敗という成績で終わったが,彼らから痛烈なパンチを浴びて,日本の野球界は自分たちの野球がいかにレベルの低い野球であるかを十分に思い知らされたはずだと思います.この日本の野球のみじめさについて,日米野球の最終戦が行われた翌日,東京中日スポーツ新聞紙上で,プロテニス・プレーヤーの佐藤直子さんが,”井の中の野球”と題して,いみじくも述べておられるので,その記事をお眼にかけておきましょう.
「日米野球はやらないほうがよかった.私は日本におけるプロ野球の成功は,日本国内だけでやっているところにあると思う.日本人にとって,外人とやって負けるのを見るのは,あまり愉快なことではない.だから,そういうぶざまなところをみせるくらいなら,日本人同士でやっていたほうが,国内ではずっと盛り上がること請け合いだ.
テニスがよい例だ.いったんファンがベッカーやレンドルを見慣れてしまうと,レベルの低い日本人選手のプレーを見ると,まるで迫力を感じない.日本人のプレーに魅力を感じなくなってしまう.ましてやレンドルやナブラチロワに日本人のトップ選手がコロコロ負けるところをみてしまえば,日本人テニスプロをバカにするほど,ファンの目はきびしい.(中略)」
いままで日本第一のメジャースポーツとしてアグラをかいていたプロ野球だ.日本シリーズに優勝すればこの世に自分たちより強いものはいないぐらいの勢いだったが,これからたかがレベルの低い日本選手の一人じゃないか,ということになってしまうかもしれない.
テニスプロの悲哀をグチにして書いてしまった」
科学する野球・実技篇,pp.210-211
当時よりもプロ野球選手の体格は向上していますが,野球の動作自体は変わっていないので,個々の選手のパフォーマンスが大幅に改善されているとはいえません.
選手の能力が上がっているのなら,もっとMLBで成績を残せる選手が出てくるはずです.日本の野球界は,鈴木誠也選手のような典型的日本人打法が正しいという基準を変えていないので,MLBで通用する打者はなかなか出てこないと思われます.
続いて日米野球の引用の後半部分です.
これを読まれて,どなたも共感を覚えられるのではないでしょうか.
実際のところ,彼らのプレーの残像が目から消えやらぬうちに行われた,同年11月15日のセントラルリーグ選抜の東西対抗戦は,迫力がなく,まったく魅力を感じなかったのは,私ばかりではなかったことと思いますが,どうして日本の野球はかくもお粗末なのでしょうか.
このアメリカ野球との違いはどこに原因があるのか,日米野球の差はパワーの差に過ぎないとしか眼に映らない日本の野球界の指導者たちではその原因を解明するのは無理だと思います.
昭和61年11月24日発行の週刊ベースボール誌上に,デーブ・ジョンソン監督と王監督との対談記事が掲載されていますが,その中で王さんが,
「大リーグのバッターも,だいぶスイングが変わってきたようだね.体も前に突っ込まなくなって,引きつけて打つようになったもの.でも,テクニックということに関しては,日本のほうがね……」と述べているのですが,あの王さんでさえも,アメリカ野球をこんな見方しかできないのだから,いつまで経ってもアメリカ野球に追いつくことができないのです.また,この日米野球に出場した日本チームの四番打者・落合博満選手が,完全にバットの芯でとらえても差し込まれることが多かったと述べていたが,写真123の落合選手のフィニッシュを見ると,明治の大砲のように打った後あとずさりしているから,ボールの力に押し戻されていることがよくわかるが,落合選手の打ち方をお手本のように思っている日本の野球界の指導者たちは,大リーガーが体重を前足に移し,腰のラテラル・モーションで求めたラテラル・モーメンタムをバットにとりこんで打っているのに,後ろ足に体重を残して打っていると見え,相変わらず,体重を軸足(後ろ足)に残して腰の回転で打っていると解説しているのだから,このような方たちからの指導を受ける限り,日本のバッティングは向上するはずがありません.
「科学する野球・実技篇」,pp.211-212
典型的日本人打者にみられる明治の大砲

日本の野球界では,体の中心に仮想軸を意識して,回転で打つのが正しいとされていますが,このうち方では,打った後すぐに前足が地面から離れてしまいます.
「人の形」で打つのと比べて,ボールに力を伝えることが難しくなるので,投手の球威のあるボールに力負けする,ボールが飛ばないということが起こります.
「科学する野球・実技篇」,p.212,写真123
「科学する野球」には,ゴルフ用語が多く使われています.引用文の「明治の大砲」の意味がわからない方もいるかと思います.
明治の大砲とは
引用元:https://golf-jalan.net/contents/beginner/glossary/2111/#:~:text=%E6%98%8E%E6%B2%BB%E3%81%AE%E5%A4%A7%E7%A0%B2%E3%81%A8%E3%81%AF,%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
明治の大砲とは、ゴルフにおける悪いスイングを比喩した言葉です。明治時代に使用されていた大砲に由来しています。その当時使われていた大砲には車輪がついており、砲弾を発射した時に、反動で後ろに下がってしまうことがありました。スイング時、右足へ重心が乗ったままとなり、打ち終えたあと後方によろけてしまうさまを言い表しています。
落合選手が明治の大砲のように打った後あとずさりしているのは,体の中心に軸を意識して打っているからです.
「人」の形(右打者は「入」の形)で打てば,上体が後ろに倒れて前脚が残るので,落合選手のように打った後,前足がすぐに地面から離れることはありません.
日本の野球界の基準では,鈴木誠也選手のように体の中心に軸を意識して打つことが正しいとされているので,「人」の形で打つことができません.
日本人選手で「人の形」で打っているのは,大谷選手くらいしか見当りません.