2021年12月14日 10:43 AM
「科学する野球」で正しい打ち方とされている「空手打法」は,「スナップ打法」と混同されているところがあり,理解が難しくなっています.実際の動画を確認した上で,「空手打法」と「スナップ打法」の違いについて詳しく解説します.
空手打法を行う打者
ホセ・アルトゥーベ
空手打法では,次の特徴が見られます.
- バットの真ん中の板目とトップハンドの手が平行になるようにバットを握る
- インパクトから手首が返る前までの間は,トップハンドの手の軌道とスイングの軌道は一致する


アルトゥーベ選手はインパクトでトップハンドがスイングの軌道と同じく上向きになっています.同じトップハンドの角度でボールを押し込み,腕が伸びるときに自然に手首が返ります.
バットの真ん中の板目と平行にトップハンドを握り,板目とスイングの軌道を一致させてボールを押し込んでいく.これが「空手打法」です.
ジョーイ・ウェンドル


動画を観ると,インパクト後,インパクトの衝撃でトップハンドが少し掌屈しているのを確認できる.掌屈した後,トップハンドの角度を戻してボールを押し込んでいる.
スナップ打法を行う打者
フアン・ソト
スナップ打法では,次の特徴が見られます.
- トップハンドの掌屈が大きいため,インパクトでトップハンドの角度とスイングの軌道が一致しない
- トップハンドの掌屈をほどいてスナップするので,腕が伸びたときにトップハンドの甲が地面を向く


「空手打法」ではバットの真ん中の板目とトップハンドが平行になるようにバットを握り,スイングの軌道に合わせてボールを押し込んでいきます.これは柾目で打つということです.
「スナップ打法」では,手の振子を使うため,トップハンドの掌屈を大きくしておく必要があります.そのため,トップハンドの角度とスイングの軌道が一致しないということが起こります.
掌屈をほどいてスナップするので,腕が伸びたときにトップハンドの甲が地面を向きます.「空手打法」では,スナップを使わない分,腕が伸びるときには手首が返ります.
スナップ打法の場合,仮にバットの真ん中の板目とトップハンドが平行になるようにバットを握っていたとしても,掌屈が大きいため,インパクトの時点で柾目で打っていないことになります.
カルロス・ゴンザレス


ゴンザレス選手は,インパクトでトップハンドがかなり掌屈されています.このトップハンドがバットの真ん中の板目と平行に握られているとすれば,柾目で打つためには黄色の線と同じスイングをしなければなりません.つまり,この打ち方は「空手打法」ではないということです.
トップハンドの掌屈をほどいてスナップを利かせますが,ゴンザレス選手は腕が伸びても掌屈が完全にほどかれていません.しかし,黄色の線に挟まれた角度は手首を支点とする手の振子がスナップとして使われていると考えられます.
空手打法,スナップ打法,どちらで打った方がボールをより強打できるかについては,はっきりしたことはいえません.
ケン・グリフィー・ジュニア

インパクトの衝撃で掌屈が大きくなっている可能性があるので,インパクトでの掌屈は写真よりも少し小さいかもしれません.
引用元:https://theundefeated.com/features/ken-griffey-jr-tied-mlb-record-for-consecutive-home-run-games/
写真を見ると,トップハンドの掌屈がかなり大きいので,グリフィー選手はスナップ動作を行っていたかもしれません.動画で確認を試みましたが,動画が古いせいか画質がぼやけて手もとを確認することができませんでした.
今回,スナップ打法を行っている打者を探しましたが,なかなか見つけることができませんでした.きちんと数えたわけではありませんが,95%の打者は空手打法(完璧な空手打法を行っているかは別)を行っていると思われます.
また,スナップ打法を行っている打者も,すべての打席で完璧なスナップ打法を行っているわけではなく,選手自身も意識してこのような打ち方をしているのかはわかりません.
「科学する野球」を読んでいた方の中には,「スナップ打法」を「空手打法」と思っていた方も多いのではないでしょうか.