「アーロン・ジャッジ選手が打球を飛ばせない理由①-空手で打っていない」では,ジャッジ選手の本塁打の平均飛距離が出ていない理由として,空手打法で打っていないことを挙げました.
今回は,なぜ空手打法で打てないのかについて,説明します.
手とスイングの軌道が平行になっていないジャッジ選手
ジャッジ選手のインパクトからボールを押し込む動作を確認します.
ジャッジ選手は手とスイングの軌道が平行になっていません.
手自体がボールを押し込む軌道とバットのスイングの軌道が平行になっていても,手がスイングの軌道と平行になっていなければ,ボールを強く押し込むことができません.
「空手打法」で打つと,アルテューベ選手のように,トップハンドの手とスイングの軌道は平行になります.
トップハンドの手とバットの真ん中の木目を平行に握らないと,ボールを強打することはできません.
ジャッジ選手はインパクトのときに,ボトムハンドの手が背屈(手の甲側に曲げる)するクセがあります.
手を背屈するので,手の向きが下向きになり,スイングの軌道と平行になりません.手を背屈したままボールを押し込んでも,強打できないためボールは飛びません.
それでもホームランを量産できるのは,恵まれた体格によるところが大きく,「入」の形で打っていることも飛距離を伸ばすことに貢献しています.
アーロン・ジャッジ 年度別 本塁打数 平均飛距離 | ||
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年度 | 本塁打数 | 平均飛距離(ft) |
2024 | 58 | 409 |
2023 | 37 | 408 |
2022 | 62 | 412 |
2021 | 39 | 402 |
2020 | 9 | 414 |
2019 | 27 | 396 |
2018 | 27 | 397 |
2017 | 52 | 413 |
2016 | 4 | 416 |
2016-2024 | 315 | 407 |
表を見てわかるとおり,ジャッジ選手の飛距離は2016年のメジャーデビューの頃から変わっていません.デビュー当時から空手打法で打っていないため,飛距離が出ていません.
ボトムハンドを背屈して構えるから空手で打てない
ジャッジ選手が空手で打てないのは,構えに原因があります.
ジャッジ選手は構えでトップハンド(バットを握ったときに上に来る手)を背屈(手の甲側に曲げる)するクセがあります.
インパクトで空手になっていれば問題ないのですが,ジャッジ選手は背屈したままインパクトしてしまうので,ボールを強打できません.
オルティーズ選手は,トップハンドを背屈(手の甲側に曲げる)もせず,掌屈(手の平側に曲げる)もせず構えています.このようにバットを握ると肘が外に突き出しやすくなるため,フライングエルボーで構えることが容易になります.
フライングエルボーで構えると,ヒッチ動作を利用して肘を先行させてスイングすることができます.
本塁打を凡打にしているアーロン・ジャッジ選手
ジャッジ選手の本塁打の映像を,飛距離がすごいと驚きの目で見ていた方も多いと思います.
しかし,インパクトの写真で「空手打法」になっていないことが判明したため,これではボールを飛ばせるはずがないとなりました.
本塁打の平均飛距離を調べたところ,案の定飛距離が出ていませんでした.本来ならば,ジャッジ選手の体格(身長:約200.7 cm,体重:約127.9 kg)で空手打法を行えば,とてつもない飛距離が出るはずです.
トップハンドを背屈せずに構えるようにすれば,空手で打てるようになるので,これまで以上に本塁打を量産できるようになります.
ジャッジ選手は「入」の形で打っているものの,「空手打法」で打っていなかったため,これまでに多くの本塁打を損していることになります.非常にもったいないことです.
村上豊氏は,メジャーリーガーの動作の合理性を多年にわたり研究し,その研究成果を「科学する野球」にまとめています.「空手打法」は合理的な打撃動作の一つです.
「空手打法」は難解で,村上豊氏の説明に書かれていないことを読み取ることが必要になりますが,正しく理解することでジャッジ選手の飛距離の問題と動作の改善について言及することができます.