「科学する野球」では「ゴルフスイング」は完全否定されています.「ゴルフスイング」とは肩を回さずに打つことをいいます.
王貞治選手はゴルフスイングでスランプに陥りましたが,大谷翔平選手はゴルフスイングで快打を連発しています.
同じゴルフスイングで王選手が打てないのに,大谷選手が打てるのはなぜなのか,その理由について解説します.
ゴルフスイングとは?
「科学する野球」の著者である村上豊氏は,肩を回さないで打つことを「ゴルフスイング」と定義しています.
上図のように,野球とゴルフではボールを打つ条件[ボールの位置,打つボールの状態(動いているボール,止まっている)]が異なります.
ゴルフのボールの位置でボールを強打しようとすれば,両肩を結ぶ線と打球線(弾道)を平行にする方がよいので,ゴルフでは肩を回さずに打つのが正解となります.
しかし,野球では力のあるボールに負けないように,中心衝突でボールを強打するためには,後ろ腕でボールを押し込む必要があります.
ボールを押し込む力を大きくするためには,(ホ)のように肩を回して両肩を結ぶ線と打球線(弾道)を平行にした方がよいことがわかります.つまり,野球では肩を回して打つのが正解です.
ゴルフスイングが否定される理由
ゴルフスイング(新田打法)で打ってはいけない理由は次の通りです.
ゴルフスイング(新田打法)で打ってはいけない理由
- ボールを強打するためには,後ろ腕でボールを押し込むことが必要.
- 後ろ腕でボールを強く押し込むためには,打球線(弾道)に対して肩とバットを90°に交わらせなければならない.
- 肩を回さなければ,2を実現できない.
以上の理由により,肩を回さないゴルフスイング(新田打法)は否定されることになります.
作られた左打者の欠点
『フリーマン選手の打撃理論②-ゴルフスイングは「作られた左打者」にとって理にかなったスイング』でも解説していますが,「作られた左打者」には次のような欠点があります.
右投げ左打ちの打者がもつ欠点
- 後ろ腕(非利き腕)でボールを押し込むことができない
- 右腕が強いため横振りになる
- 外角のボールを手首をこねて引っかける
「作られた左打者」は右腕主導のスイングになるため,上(左)図のように中心衝突させると,横振りになりボールを引っかけやすくなります.
肩とバットを投球線(球道),打球線(弾道)に対して90°にすると右腕が勝ってしまうので,故意に肩を回すのを遅らせて,横振りになり引っかけることを防止しているわけです.
つまり,右投げ左打ちの打者が肩を回さないゴルフスイングになるのは,仕方がないことだといえます.
右投げ左打ちの打者は長打力を望めないため,「作られた左打者」として成功するためには,フレディ・フリーマン選手や,ルイス・アラエス選手のように左方向に打つことがカギとなります.
参考記事
王貞治選手は左投げ左打ち
同じゴルフスイングで王選手が打てないのに,大谷選手が打てるのはなぜなのか,その理由は,「王選手は左投げ左打ちで,大谷選手は右投げ左打ちだから」です.
王選手は元々左投げ左打ちのため,肩とバットを投球線(球道),打球線(弾道)に対して90°に交わらせて,利き腕の左腕でボールを押し込んでいました.
王選手は肩を回さないゴルフスイングになることで,従来の打ち方ができなくなりスランプに陥りました.
しかし,大谷選手は右投げ左打ちで,元々肩を回さないゴルフスイングで打っていましたから,「ゴルフスイングだから打てない」は理由になりません.
大谷選手の記事を多く載せていますが,「ゴルフスイングだから打てない」ということを載せている記事があります.これは正しいとはいえません.
右投げ左打ちの打者がゴルフスイングになるのは仕方がないことであり,理にかなっているといえますが,成績を残すためには長打を期待できないため,フレディ・フリーマン選手や,ルイス・アラエス選手のように左方向に打つことが必要となります.
右投げ左打ちの大谷選手が長距離砲として実績を残していることについては,今なお懐疑的な見方をしています.
本来,右投げ左打ちの打者は後ろ腕(非利き腕)でボールを押し込むことができないので,長打力は望めないと考えるのが適当です.
大谷選手は他の選手では真似できない特殊,変則的な打法によって,本塁打を量産できているわけですが,打撃動作は王道から外れたものになっています.
特殊,変則的な打法には,必ず弱点があるはずですから,相手投手が弱点を突く投球をすれば打てなくなるはずであるという見解は以前から変わっていません.
ゴルフスイング(新田打法)についての参考記事