2021年12月11日 11:26 AM
「科学する野球」では,フックグリップ,コック,アンコック,ヒンジといったゴルフ用語が使われています.村上氏はゴルフについての著作もあり,野球のバットの握りや慣性モーメントを小さくする動作を説明するのに,ゴルフ用語を多用しています.
フックグリップ

引用元:http://www.radfordgolf.co.za/common-setup-fault-neutral-strong-or-weak-grip/

フックグリップ(ストロンググリップ)では,スクエアグリップ(ナチュラルグリップ)から,右腕と右手を回外(外側に回す)し,左腕と左手を回内(内側に回す)します.
逆にウィークグリップでは,スクエアグリップ(ナチュラルグリップ)から,右腕と右手を回内(内側に回す)し,左腕と左手を回外(外側に回す)します.
「科学する野球」では,打者のバットの握りをこのゴルフのフックグリップで握るようにとの説明になっています.
画像の引用元:https://golf-score-up.com/correctswing-5/
フックグリップ(ストロンググリップ)でテークバックすると,右利きの場合,トップで左手は背屈(手の甲側に曲げる)しますが,右手は掌屈(手の平側に曲げる)しません.
空手打法を行う際のグリップに近いといえば近いのですが,あくまでもゴルフのトップなので,このゴルフのトップを野球の打者の構えとして認識するのは無理があります.
「科学する野球」のコック
科学する野球・実技篇のp.47にコックとアンコック(コックを解く)を示した図が載っており,「手をコックするというのは,図㉒のように親指の背面のほうに手を折り曲げることをいいます」との説明があります.

コックとヒンジの違い
ところで,このコックについて正しく理解されていない人が見受けられるので,「科学する野球」の打撃篇で述べておいたことですが,さらに説明を加えておきましょう.さて,手をコックするというのは,図㉒のように親指の背面のほうに手を折り曲げることをいいます.図⑳を見ていただきますと,その①は,バットをフックグリップで握ったボトムハンドをコックさせたものであり,その②はフックグリップで握ったトップハンドをコックさせたものであり,その③はフックグリップで握った両手をコックさせたものであるが,なぜこのように手をコックするかというと,図㉑を見ていただくとわかるのだが,トンカチ(金槌)でクギを打つとき,コックして構えた,その①のボトムハンド,その②のトップハンドとも,インパクトでそのコックをアンコック(コックをほどく)してやると,手首を支点にしてテコの作用がはたらき,トンカチの先端のヘッドのスピードが増幅されて,強打することができるからなのです.
引用元:科学する野球・実技篇,pp.46-47
引用文に書いてあることを簡単にまとめると,構えでトップハンドとボトムハンドをコックしておくと,トップハンドが掌屈,ボトムハンドが背屈されるので,インパクトでアンコック(コックをほどく)すると,スナップを利かせて強打できるということです.
これはスナップ打法のことをいっています.「科学する野球」では「空手打法」と「スナップ打法」が混同されているので,注意が必要です.
次に,コックすると,本当にトップハンドが掌屈,ボトムハンドが背屈されるのかを確認します.

図20-①は,バットをフックグリップで握ったボトムハンドをコックさせたもの
コックするというのは,図㉒のように親指の背面のほうに手を折り曲げることをいう.
ボトムハンドを,親指の背面のほうに手を折り曲げると,背屈は大きくなるが,バットのヘッドが下がるのでバットは寝た状態になる.
バットが寝るので,図20-①のような構えにはならない.
引用元:科学する野球・実技篇,p46,図20-①

図20-②は,フックグリップで握ったトップハンドをコックさせたもの
コックするというのは,図㉒のように親指の背面のほうに手を折り曲げることをいう.
トップハンドを,親指の背面のほうに手を折り曲げると,掌屈が少し大きくなるかもしれないが,バットのヘッドが下がるのでバットは寝た状態になる.
バットが寝るので肘が横に張らず,フライングエルボーにはならない.
図20-②のような構えにはならないはず.
引用元:科学する野球・実技篇,p46,図20-②

図20-③は,フックグリップで握った両手をコックさせたもの
両手をコック(親指の背面のほうに手を折り曲げる)して,トップハンドが掌屈,ボトムハンドが背屈されたとしても,バットは寝るはずなので,図20-③のような構えにはならない.
トップハンドをコックすると,脇が締まりフライングエルボーで構えることができない.
引用元:科学する野球・実技篇,p46,図20-③
「科学する野球」では,トップハンドを掌屈,ボトムハンドを背屈する方法として,ゴルフ用語のコックを使ってますが,コック動作は実際の野球の構えにはなじみません.
ゴルフ用語を使わずに,単に「トップハンドを掌屈,ボトムハンドを背屈して構える」とした方が,わかりやすいといえます.
「科学する野球」のヒンジ
ヒンジが説明されている箇所を引用します.
このように,王さんのようなホームランバッターでも,トップハンドをヒンジすると,打てなくなるのですが,このヒンジ(図㉖)というのは,蝶番のように,手を背屈(手の甲のほうに手を曲げる),あるいは,掌屈(たなごごろのほうに手を曲げる)する動作で,写真⑰,⑱を見ると,王さんのトップハンドは背屈のヒンジを行っています.
引用元:科学する野球・実技篇,pp.51-52
ヒンジ(hinge)は蝶番(ちょうつがい)という意味で,蝶番の動きとなるので掌屈,背屈どちらも該当します.しかし,スナップ打法を行うためにはトップハンドを掌屈,ボトムハンドを背屈することが必要になるので,トップハンドを背屈,ボトムハンドを掌屈するヒンジはNGとなります.


王選手はトップハンドを背屈するヒンジを行っているので,悪い打ち方になっています.
ゴルフのコックとヒンジ
「科学する野球」でのコック,ヒンジはゴルフ用語として使われているので,意味は同じかと思いますが,念のためゴルフサイトで確認します.
ゴルフのサイトでは,
- コック:手首を親指側(縦方向)に折る動き
- ヒンジ:手首を右手の甲側(横方向)に折る動き(右打ちの場合)
となっています.


他のサイトでは,
- 「コック」とは、一般的に親指方向に手首を折る動きのこと
- 右利きの場合、右手の甲側に手首を折ることを「ヒンジ」ということがあります
となっています.
ヒンジ(hinge)とは蝶番(ちょうつがい)と言う意味で,戸が蝶番で動くように手首を折る動作を表しているようです.

https://sports.dunlop.co.jp/golfschool/updates/detail/20200816214502.html

https://sports.dunlop.co.jp/golfschool/updates/detail/20200816214502.html
「科学する野球」では,ゴルフ用語が多用されていますが,必ずゴルフで理解しなければならないということではありません.ゴルフ用語が入ることで,かえってわかりにくくなっている側面があるので,わかりやすいことばに置き換えて理解してください.