「科学する野球」の著者である村上豊氏が提唱する「空手打法」について解説します.
「科学する野球」で説明されていない点を補足します.
トンカチはバットの真ん中の木目を表している
現役時代の長嶋茂雄選手のようにバットの木目に無頓着な打者は,板目で打ってバットを折ることが多くなります.
バットのマークは板目を表しており,マーク面で打つとバットが折れやすくなります.マークを正面に向けて構えると,柾目で打つことができます.
上図のように,バットでボールを打つときに,柾目で打つと線で力を受けるため強打できますが,板目で打つと面で力を受けるため,強打できずバットが折れる可能性があります.
打者のグリップからの力が直接働くのは,バットの真ん中の木目ですから,真ん中の木目だけを取り出してボールを打つことは,トンカチでクギを打つことと同じことになります.
トンカチと手が平行になるから空手打法
「空手打法」ではトンカチでクギを打つイラストが多く出てきます.
トンカチはバットの真ん中の板目を取り出したもの,ボールは球道を表し,トンカチでクギを強く打つことは,バットでボールを強打することを意味します.
村上豊氏が着目しているのは,トンカチをどのように握ったときにクギを強く打てるかということです.
トップハンド(構えたときに上に来る手)で打つときは,手の甲を下向きに握らないと,クギを強く打てません.
手の甲が下向きなるのを空手にたとえて,「空手打法」と称しています.
ボトムハンド(構えたときに下に来る手)で打つときは,手の甲を上向きに握らないと,クギを強く打てません.
手の甲が上向きなるのを空手にたとえて,「空手打法」と称しています.
本サイトでは,イラストでの説明をわかりやすくするため,空手打法の握りについて,「空手打法」ではバットの真ん中の木目と手が平行になるという表現を用いています.
バットの真ん中の板目と手を平行にして打つだけ
「空手打法」とは,簡単にいうと「バットの真ん中の板目と手を平行にしなければ,ボールを強打できない」ということです.
イラストは水平のスイングになっていますが,実際のスイングは上向き,下向きになることがあります.
「スイングの軌道と手を平行にしなければ,ボールを強打できない」というほうが,わかりやすいかと思います.
さらに厳密にいうと,ボトムハンドは舵取りの役割を担っているため,トップハンドがスイングの軌道と平行になっていれば問題ありません.
実際にボールを押し込むのはトップハンド側の後ろ腕になります.
上図のように,「空手打法」ではトンカチとトンカチを持つ手は平行になります.この平行になるという点について「科学する野球」に記載はありません.
「科学する野球」には「空手で打つ」ということしか書かれていませんので,補足させていただきます.
ホセ・アルトゥーベ選手の空手打法
空手打法では,次の特徴が見られます.
- バットの真ん中の板目とトップハンドの手が平行になるようにバットを握る
- インパクトから手首が返る前までの間は,トップハンドの手の軌道とスイングの軌道は一致する
アルトゥーベ選手はインパクトでトップハンドがスイングの軌道と同じく上向きになっています.同じトップハンドの角度でボールを押し込み,腕が伸びるときに自然に手首が返ります.
バットの真ん中の板目と平行にトップハンドを握り,板目とスイングの軌道を一致させてボールを押し込んでいく.これが「空手打法」です.