アメリカン・リーグの本塁打数のトップを独走するアーロン・ジャッジ選手は9月4日現在,51本塁打を放っています.しかし,高めのボールはホームランにできていません.
ア・リーグ新記録の62本塁打を達成した2022年との比較
ジャッジ選手がアメリカン・リーグ新記録の62本塁打を達成した2022年と2024年9月4日現在のコース別本塁打数を比較します.
上図を比較すると,2024年はここまで51本塁打を打ちながら,高めのストライクゾーンの本塁打がありません.内角高めのボールゾーンは4本塁打しています.
アーロン・ジャッジ 高め 打撃成績 2022 | ||||
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高め | 打率 | 本塁打 | 出塁率 | 長打率 |
ストライクゾーン | .314 | 8 | .321 | .863 |
ボールゾーン | .306 | 3 | .561 | .611 |
計 | .310 | 11 | .445 | .759 |
アーロン・ジャッジ 高め 打撃成績 2024 9/4現在 | ||||
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高め | 打率 | 本塁打 | 出塁率 | 長打率 |
ストライクゾーン | .077 | 0 | .196 | .128 |
ボールゾーン | .316 | 4 | .717 | 1.000 |
計 | .155 | 4 | .457 | .414 |
高めのボールの成績を比較すると,2022年の打率.310に対して2024年は.155とかなり低打率になっています.
内角高めのボールゾーンは2022,2024年ともに得意にしていることがわかります.
「人」の形で打つ打者は高めのコースを打てない
2023年のMLB全打者のコース別打率を見ると,高めのコースが打てていないことがわかります.
MLBの打者は「人」(右打者は「入」)の形で打つ傾向があります.この打ち方ではアップスイング(アッパースイングではない)となるため,スイングの軌道が少し上向きになります.
つまり,アップスイングでは高めのボールが打ちにくくなるため,コース別打率が低くなっていると考えられます.
「入」の形で打つアーロン・ジャッジ
『「入」の形で打つ-アーロン・ジャッジ』で解説したように,ジャッジ選手は「入」の形で打っています.
アメリカン・リーグ新記録の62本塁打を記録した2022年は,高めのボールに対応(打率.310,11本塁打)できていましたが,2024年は対応できていません(9/4現在,打率.155,4本).
アップスイングは投球の球道に合わせた多少上向きのスイングとなりますが,2024年は2022年よりもスイングの角度がより上向きになっている可能性があります.
スイングがより上向きになると,真ん中,低めのボールが打ちやすくなる反面,高めのボールが打ちにくくなることが考えられます.
2022年と2024年の打球角度を比較する
ジャッジ選手のコース別打球角度を2022年と2024年とで比較します.
2024年は12コースのうち6コースで打球角度が大きくなっています.
すべてのコースで打球角度が大きくなっているわけではありませんが,ボールゾーンも含めて大きく捉えれば,2022年よりも打球角度は大きくなっているという見方もできます.
本塁打に絞って打球角度を比較すると,真ん中,低めのコースでほぼ打球角度が大きくなっていることがわかります.
スイングの軌道の角度と打球角度が同じであると仮定すると,「アップスイングの軌道が上向きになったため,高めのボールへの対応が難しくなった」ということを高めのボールを本塁打できない理由と考えても,あながち間違いではないと思われます.
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