トミー・ジョン手術

内側側副靱帯を損傷する原因

 トミー・ジョン手術とは「内側側副靱帯再建術」のことで,内側側副靱帯を損傷するには理由があります.

肩関節最大外旋位(MER)から肩を固定して肘を突き出すと,前腕を後方に回転させるモーメントが生じる(上から見た場合)
※阿江通良・藤井範久(2002):スポーツバイオメカニクス20講,朝倉書店,p.129 図16.11を参考に作成

 上図のように肘を前方に突き出すと,前腕を後方に引っ張る力が生じますこの前腕が後方に引っ張られるときに,内側側副靱帯に外反ストレスが作用します

 外反を防ぐ役割を担う内側側副靱帯に過度の負荷がかかることによって,内側側副靱帯が損傷し,トミー・ジョン手術に至ります.

内側側副靱帯を損傷する条件

 内側側副靱帯を損傷する条件は次のとおりです.

  • 肘の突き出しが行われている
  • 肩が固定されている
  • 上腕が外側に傾いている
  • タイプ4(水平),タイプ3(垂直<水平)の腕の振りである
  • 腕の振りが速い(球速が速い

 投球動作の加速期(最大外旋位からリリース)において,これらの条件に該当する場合,内側側副靱帯を損傷する条件が整います.

 内側側副靱帯を損傷する投手は「肘の突き出し」を行うため,腕の振りがタイプ4(水平)か,タイプ3(垂直<水平)に分類されます

 トミー・ジョン手術を受ける投手は,ほとんどがタイプ4(水平)に該当します.内側側副靱帯を損傷するメカニズムを理解するには,腕の振りの分類を押さえておくことが必須となります.

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