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タイプ3-垂直<水平 でボールを切る
投手の腕の振りは,リリース後,前腕が到達する位置によって4つのタイプに分類されます.
- 垂直 垂直にボールを切る
- 垂直=水平(中間型) 垂直にボールを切る要素と水平にボールを切る要素が半々
- 垂直<水平 水平にボールを切る要素が垂直にボールを切る要素よりも大きい
- 水平 水平にボールを切る
2と3は,垂直の腕の振りと水平の腕の振りが混合しているタイプです.
この分類は,肘関節内側側副靱帯損傷に至る原因を説明するのにとても役立ちます.
タイプ3(垂直<水平)の投手は,ボールを垂直に切る要素よりも,ボールを水平に押し出すように切る要素が大きくなります.リリース後,腕が少し背面側に入ったところで止まります.
指が垂直な壁をさするような感じでボールを切るため,.球速ではなくボールのキレで勝負するタイプの投手といえます.
振り幅がやや大きくなるので球速は速くなりますが,回転数は低くなるためボールのキレよりも球速で勝負するタイプの投手といえます.
タイプ3の投手は肘の突出しが行われることが多く,内側側副靱帯を損傷する可能性が大きくなります.
アロルディス・チャップマン
クレイトン・カーショー
ノア・シンダーガード 2020 TJS
ペドロ・マルティネス
岸孝之
山本由伸
菅野智之 2014 内側側副靱帯損傷 TJSなし
藤川球児 2013 TJS
タイプ3(垂直<水平)の投手はボールのキレよりも球速で勝負する
チャップマン投手など上に挙げた投手は,リリース後,腕が体の前で止まらず大きく背面側に入っています.リリース後,腕が体の前で止まらず背面側に入るということは,水平にボールを切る要素が入っていることを意味します.
肩から下ろした垂線と上腕との角度が大きい(45°から90°までを目安とする)ので,水平にボールを切る要素がかなり大きくなっているといえます.
肩から下ろした垂線と上腕との角度が90°になるまでは垂直にボールを切る要素は完全に消えているとはいえないため,垂直<水平にボールを切る腕の振りになっていると解釈することができます.
「垂直<水平」にボールを切る腕の振り
- リリース後,腕が体の背面側に入る.
- 肩から下ろした垂線と上腕との角度が45°から90°までの間になる.前腕との角度が45°を超えても,上腕との角度を腕の振りを止めた角度とみなす.ただし,上腕が体にあたって止められ,上腕の運動エネルギーが前腕に伝達され前腕が曲り,前腕との角度が90°以上になる場合は水平にボールを切る腕の振りになると解釈する.
- リリース後,腕が体の前で止まらず背面側に大きく入るということは,水平にボールを切る要素がかなり大きくなっている.
- 肩から下ろした垂線と上腕との角度が90°になるまでは,垂直にボールを切る要素は完全に消えているとはいえない.
- 垂直<水平にボールを切る腕の振りになっている.
- 水平にボールを切る要素が大きいため,スピンがかかりにくくなると考えられる.
- リリースポイントが体から離れ,やや前方になる.
- リリースポイントが体から離れると,腕の振り幅が大きくなるため,球速が出やすいと考えられる.
- 水平にボールを切る要素が大きくなると,肘の突き出しが行われるため,内側側副靱帯を損傷しやすくなる.