タイプ2-垂直=水平(中間型)でボールを切る
投手の腕の振りは,リリース後,前腕が到達する位置によって4つのタイプに分類されます.
- 垂直 垂直にボールを切る
- 垂直=水平(中間型) 垂直にボールを切る要素と水平にボールを切る要素が半々
- 垂直<水平 水平にボールを切る要素が垂直にボールを切る要素よりも大きい
- 水平 水平にボールを切る
2と3は,垂直の腕の振りと水平の腕の振りが混合しているタイプです.
この分類は,肘関節内側側副靱帯損傷に至る原因を説明するのにとても役立ちます.
タイプ2(垂直=水平)の投手は垂直にボールを切る要素と水平に切る要素が半々になります.分類の便宜上半々としていますが,垂直にボールを切る要素が大きい投手と考えてもらって支障はありません.
タイプ2(垂直=水平)に該当する投手は,リリース後,すぐに腕が止まらず少し背面側に入ります.
振り幅が小さいので球速はそこまで期待できませんが,垂直にボールを切る要素も残っているため回転数は多くなります.球速よりもボールのキレで勝負するタイプの投手といえます.
タイプ2(垂直=水平)の投手は,肘の突出しが行われることがまずないため,内側側副靱帯を損傷する可能性は小さくなります.
マックス・シャーザー
グレッグ・マダックス
江川卓
トレバー・バウアー
トレバー・バウアー投手のスピン・レートは,粘着物質の影響があります.
タナー・スコット
ルーカス・シムズ
涌井秀章
垂直・水平中間型でボールを切る投手は,垂直にボールを切る要素が大きい
シャーザー投手など上に挙げた投手は,リリース後,腕が体の前で止まらず少し背面側に入っています.
リリース後,腕が体の前で止まらず背面側に入るということは,水平にボールを切る要素が入っていることを意味します.
しかし,肩から下ろした垂線と上腕との角度は小さい(45°までを目安とする)ので,水平にボールを切る要素はまだあまり大きいとはいえません.
垂直にボールを切る要素も残っているため,垂直・水平中間型でボールを切る腕の振りになっていると解釈することができます.
シャーザー投手は真横からの動画があれば,ほぼ垂直にボールを切っていることを確認できるのではないかと思われます.腕の振りもブレーキをかけたところでほぼ静止しています.
江川投手については,リリース後,腕を止めるときに,上腕が止まっても前腕は少し動いています.動画では垂直にボールを切って腕全体を止めているようにもみえます.
しかし,垂直にボールを切る場合は手でブレーキをかける意識があるはずなので,肘にブレーキがかかって前腕が動くということは完全な垂直にボールを切る腕の振りになっていないことがわかります.
垂直・水平中間型でボールを切る腕の振り
- リリース後,腕が体の背面側に入る.
- 肩から下ろした垂線と上腕との角度が0°から45°までの間になる.前腕との角度が45°を超えても,上腕との角度を腕の振りを止めた角度とみなす.
- 投手のステップ幅や,リリース後,上体を倒すかどうかによって,腕が入る位置が変わってくる.上体を倒すと前腕が下腿グラブ側に入りやすく,上体を倒さない投手では大腿のグラブ側に入りやすくなる.
- リリース後,腕が体の前で止まらず背面側に入るということは,水平にボールを切る要素が入っている.
- 肩から下ろした垂線と上腕との角度は小さいので,水平にボールを切る要素はあまり大きいとはいえない.
- 肩から下ろした垂線と上腕との角度は小さいので,垂直にボールを切る要素も残っている.
- 垂直・水平中間型でボールを切る腕の振りになっている.
- 垂直にボールを切る要素も残っているため,スピンを強くかけることも可能と考えられる.
- リリースポイントは体から少し離れるが,それほど前方にはならない.
- リリースポイントが体から少し離れる程度で,腕の振り幅はそれほど大きくならないため球速は出にくいが,垂直にボールを切る要素もあるためスピンのかかったキレのあるボールを投げられる余地が残されている.