「人」の形で打つと上体が後傾する
「テッド・ウィリアムズ選手のアップスイング-アッパースイングとの違い」で述べたように,アップスイングではスイングの軌道が少し上向きになります.
「人」の形(右打者は「入」の形)で打つと,上体を後傾するので,アップスイングで打ちやすくなるという利点があります.
グリフィー選手のインパクト前とインパクト後の上体を比較すると,インパクト後,上体が後傾しているのがわかります.
これは「 前足を着地して,ステップに伴う前方移動にブレーキをかける第一動作」の後,「ステップ脚の膝関節を伸ばして,下肢のエネルギーを体幹に取り込んで,体幹を後ろに倒す第二動作」を行っているからです.
アーロン・ジャッジ選手もグリフィー選手と同様に「入」の形(左打者は「人」の形)で打っており,インパクト後,上体が後傾していることを確認できます.
ジャッジ選手の方がグリフィー選手よりも前脚,体幹が一直線に近くなっています.
上体を後傾するときの体幹の急激な回旋を利用して,スイングスピードを速くする
下肢のエネルギーを体幹、上肢に伝達する第二動作では,前脚の膝関節を伸展すると,体幹が後方に倒れ,左肩が後方に引っ張られ,右肩が前方に押し出されます(右打者の場合).この体幹の急激な回旋を利用してスイングスピードを加速します.
のけぞるようにスイングすることになるため,スイングの軌道が少し上向きになり,投球の軌道とバットの軌道が一致する時間が長くなるため,ボールにより大きな力を伝えることができます.
「人」の形で打つと,上図のThe williams Stroke(テッド・ウイリアムズ選手のアップスイング)になるため,投球の軌道とバットの軌道が一致する時間が長くなり,impact zone(インパクトゾーン)が大きくなります.
アップスイングでは高めのコースは打てない
アップスイングではスイングの軌道が少し上向きになるため,高めが打ちにくくなると考えられます.2018-2021のMLBのコース別打率を調べると,次のようになります.
右打者の場合,対右投手では内角高めよりも外角高めの方が打率が低く,逆に対左投手では外角高めよりも内角高めの方が打率が低くなっています.
対右投手では外角のボールに角度がつき,対左投手では内角のボールに差し込まれるため,このような打率になっていると考えられます.
ストライクゾーンで見ると,対右投手,対左投手ともに真ん中,低めのコースに比べて高めのコースの打率が低くなっている傾向があることを確認できます.
MLBではアップスイングの打者が多く,高めが打てていないといえるかもしれません.
左打者の場合,右打者よりも顕著な結果が出ています.
対左投手で外角高め,対右投手で内角高めの打率が低くなっている点は右打者と同じですが,高めは,真ん中,低めよりもすべてのコースで打率が低くなっていることを確認できます.
なぜ右打者よりも高めが打てない傾向がはっきりしているのかはわかりません
コース別打率からMLBではアップスイングで打つ打者が多いと考えられるため,「人」の形で打つ打者が主流となっていることが推測できます.