バッティングでスナップを利かせる方法


2021年12月14日 10:08 AM

 「科学する野球」では,「空手打法」と「スナップ打法」が混同されています.「空手打法」は柾目で打つための打法で,投球のスナップを応用した「スナップ打法」とは異なります.

目次

投球動作におけるスナップ

 打撃動作の中で,投手のスナップに該当する動作を確認します.

引用元:科学する野球・実践篇,p.132 図89

 投球でスナップを利かせるためには,(1)のように手関節を背屈(手の甲側に曲げる)しておかなければなりません.
 運動エネルギーを上腕,前腕,手へと小さい部位に伝達し,(5)から(6)で手首を支点とする手の振子の速度を最大にして,指先でボールを切ります.
 手関節の可動域が大きいほど,手の振子の振り幅が大きくなるので,末端(指先)の速度を大きくすることができます.

金子公宥(1994):スポーツ・バイオメカニクス入門,p.23,種々の関節運動(金子作図)図30

 「運動連鎖の考え方①-mを小さくしてVを大きくする」で述べたように,運動エネルギーは1/2×m(質量)×v(速度) の二乗で表されるので,肩を支点とする上腕の振子,肘を支点とする前腕の振子,手首を支点とする手の振子へと振子を小さくすると,伝達される運動エネルギーが同じであるとした場合,手の質量mが小さい分,末端の速度vが大きくなります.

 振子の幅が大きいほど加速できるので,手関節の可動域はなるべく大きくしておいた方がよいことになります.試合前に背屈(手の甲側に曲げる)と掌屈(手の平側に曲げる)のストレッチを十分に行っておくことが重要です.

打撃動作におけるスナップ

 投球動作のスナップでは,手首を支点とする手の振子を利用します.打撃動作で同じように手首を支点とする手の振子を利用すると,次のような動作になると考えられます.

 当ブログでは,インパクト後,両腕を伸ばす際に,後ろ腕の押し込みが主となり,前腕はボールにコンタクトするための舵取りの役割を担うという立場をとっています.打撃動作でスナップ動作を行う際も,後ろ腕の動作がメインとなります.

 上図のように,インパクトに向けて腕を伸ばす前に,あらかじめ手関節を掌屈(手の平側に曲げる)しておきます.これは投球のスナップであらかじめ手関節を背屈(手の甲側に曲げる)しておくのと同じです.

 腕が伸びきると,上腕,前腕が静止し,運動連鎖により上腕,前腕の運動エネルギーが手に伝達されます.1/2mv2のm(手の質量)が小さくなり,スナップのv(速度)が大きくなります.

 図では腕が伸びきって,上腕,前腕の動きが完全に止まってからスナップしていますが,インパクト後に腕を伸ばしながらスナップする場合でも,上腕,前腕が減速する分,手に運動エネルギーが流れ込むので,手の振子の速度は速くなります.

 投球動作のスナップは背屈から掌屈する動作になりますが,打撃動作のスナップは掌屈から掌屈をほどく動作になります.手の振子の振り幅を大きくするため,掌屈は大きくする必要があります.

後ろ腕の動き

  • 後ろ腕のトップハンド(上に来る手)を掌屈(手の平側に曲げる)したままインパクトし,インパクト後,掌屈をほどく.
  • インパクト後,掌屈の状態から掌屈をほどく動作が,投球動作の背屈(手の甲側に曲げる)から背屈をほどくスナップ動作に該当する.
  • 運動エネルギーを大きな部位から小さい部位に伝達し,スナップ動作によって手首を支点とする末端の手の振子を加速させることができるので,急激にボールを押し込むことができる.
手の甲をボールにぶつけるようにしてインパクトするケン・グリフィー・ジュニア
引用元:https://theundefeated.com/features/ken-griffey-jr-tied-mlb-record-for-consecutive-home-run-games/

 この画像ではトップハンドが手の甲をボールにぶつけるくらいまで掌屈され,スナップ打法を行っているように見えますが,空手打法でインパクとしている画像も確認できるので,グリフィー選手が常にスナップ打法を行っていたということではありません.

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