トミー・ジョン手術が急増している事実
トミー・ジョン手術が急増している件について検索すると、色々な記事が散見されます。
Jon Roegeleの調査によると、1974年から2015年3月までにトミー・ジョン手術を受けたプロ選手数はメジャーやマイナー、複数回を含め900人以上。手術を受けた年度別の人数は2000年代前半から急増し、ここ10年では500人以上の選手が手術を受けている。
引用元:ウィキペディア
ある調査によれば、1974年から2014年までにTJ手術を受けた選手は、マイナーリーグや複数回受けた選手も含め800人以上いる。年度別で見ると2000年代前半から急増し、1996年と2012年では8倍に増えているとも言われている。
引用元:https://baseballking.jp/ns/column/25756
そのニュースを見て素通りしてはいけないんじゃないかと思った。
https://number.bunshun.jp/articles/-/845231
今季の開幕からローテーションに入り、7月25日の対西武戦でリーグ一番乗りとなる完封勝利を挙げていた千葉ロッテのホープ・種市篤暉が肘の靭帯を再建するトミー・ジョン手術を受けたというニュースを見たときだ。
今年は、これでNPB9人目のトミー・ジョン手術者である。
西野勇士(ロッテ)、東克樹(DeNA)、田島慎二(中日)、堀田賢慎(巨人)、石川直也(日本ハム)、戸田隆也(広島)、近藤大亮(オリックス)、森雄大(楽天)、そして種市である。田島を除けば全て20代だ。トミー・ジョン手術者の数は2018年、2019年を既に超え、20代の選手が軒並み肘にメスをいれている。
もっとも、投手の肘の靭帯損傷、再建手術というケースは世界的な問題だ。アメリカでも、韓国でも、台湾でも珍しいことではない。今季のメジャーではシンダーガード(メッツ)、クリス・セール(レッドソックス)やバーランダー(アストロズ)らがメスを入れている。
メジャーリーグでトミー・ジョン手術がまるで感染病のように大流行している。開幕2カ月が経過したが、今季すでに20人もの投手が肘の靭帯再建手術を受けた。
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/baseball/mlb/2014/06/17/mlb_97/
マーリンズのエース、ホセ・フェルナンデス(21歳)、アスレチックスのジャロッド・パーカー(25歳)、レイズのマット・ムーア(24歳)らチームの若き大黒柱として期待されていた投手が多く、各チームともに頭を痛めている。バド・セリグコミッショナーも5月初旬のオーナー会議でこの問題について触れ「新聞を読むのが怖い」と語ったほど。それほどにトミー・ジョン手術を受ける投手のニュースが相次いだ。
周知の通り、メジャーリーグではマイナーの育成時代から厳格な投球管理を行なっている。年間70、90、120と少しずつ投球イニングを増やし、強化を図っている。もちろんその間は、投球過多を防ぎ、肩、肘の故障につながらないよう最大限の配慮を行なっている。にもかかわらず、トミー・ジョン手術は後を絶たない。なかでも問題視されているのが、トミー・ジョン手術を受ける選手の若年化だ。その原因はいったいどこにあるのか。
トミー・ジョン手術に至る原因について,ウィキペディアでは次の6つを挙げています.
①速球の全力投球によるダメージ蓄積
- TJ(Tommy John)手術の権威として知られる整形外科医のジェームズ・アンドリュースが創立したアメリカスポーツ医学研究所(ASMI)は「常に全力投球で速い球を投げようとすることが,肘の故障を引き起こすリスクを高める」という見解を発表している.
- 近年のMLBでは速球系球種の球速が増加傾向にあり,中でも平均球速と最高球速の差が小さい若手投手がTJ手術に至っている傾向がある.
②若年時からのダメージ蓄積
- ASMIが「若年時からの蓄積によって故障は引き起こされる」という見解を発表している.
- ASMIが10年間で500人のアマチュア選手のデータを集めた調査によると,年間の投球イニング数や1試合あたりの投球数が多ければ多いほど肩や肘の故障の確率が上昇していることが判明している.
- 2011年にアメリカ整形外科学会が9歳から14歳の投手481人の10年後を調査した結果によると,年間100イニング以上投げた投手が肘や肩の手術を受けるか野球を断念する確率は3.5倍になっているという.
- 野球特化傾向が進んだことが若年時のダメージ蓄積に影響しているという意見もある.
- アメリカではアマチュアスポーツの掛け持ちが一般的であったが,近年は1つの種目に特化して取り組む傾向が進み,1年中野球に取り組む者が珍しくなくなった.ASMI所属医師のグレン・フライシグによると,こうして野球特化傾向が進んだことにより20歳までに重大な故障を負うリスクは以前の3倍に膨れ上がったという.
- アメリカ国内出身者と中南米出身者とでTJ手術に至る率がほぼ同じであることから,野球特化傾向による説は成り立たないと言う意見もある.
③投球フォームによる影響
- ジェームズ・アンドリュースを始めとする整形外科医やシカゴ・ホワイトソックスで投手コーチを務めるドン・クーパーを始めとする球界関係者らは「靭帯損傷の最大の原因は投球フォーム」と主張している.
- 特に,両腕の肘が両肩よりも上になる逆W字型の投球フォームが肘へ悪影響を与えると言われており,グレッグ・マダックスの様に利き腕と反対側の肘が肩よりも上にならない投球フォームが理想と言われている.
- 逆W字型の投球フォームは身体に比べて腕が遅れて出てくるため,下半身等へ力が分散されることなく肘にダメージが集中してしまうと考えられている.
④手術の認知度が高まったことによる影響
- 重大な故障が増えたのではなく,成功率向上によって手術への抵抗感や心配が和らぎ,「騙し騙し投球するよりも手術するべき」という認識が広まったことにより,単に手術へのハードルが低くなっただけではないかという指摘もある.
⑤球種による影響
- アメリカではカーブの投球が主たる要因の1つであるという俗説があるが,ASMIが過去の学術論文を精査したところ,カーブと肘の故障を明確に関連付ける生体力学的・疫学的なデータは見つからなかった.
- ASMIは,「子供は十分な身体的成熟や神経筋のコントロールができておらず,適切なコーチングを受けていない可能性もあるため,依然として,基本的な投球動作から始め,速球,チェンジアップと段階を踏んで習得するべきであろう」という見解を出している.
- スプリッターやスライダーの投球についても,要因になると一般的に考えられている.
- スライダーに関しては,実際に肘の痛みのリスクが86%上昇するという研究や、投球動作が速球やカーブに比べて故障に繋がりやすいという研究がある.
- スプリッターについての明確な研究は少ないが,近年の投手を対象とした調査によると、サンプルサイズが少ないことに留意する必要があるが,スプリッターを多投することが故障に繋がるとは言い切れないことが示されている.
⑥プロ入り後の登板間隔による影響
- 日本では2014年にダルビッシュ有が「中4日は絶対に短い.球数はほとんど関係ない.120球,140球投げさせてもらっても,中6日あれば靱帯の炎症もクリーンに取れます」と発言したことから,MLBで主流となっている中4日の先発ローテーションを主たる要因とするような報道がある.
- 中4日の先発ローテーションはTJ手術が急増する以前の1980年代から機能してきたことや,「プロ入り後の作業負荷は発達途上の段階で生じた損傷を加速化させているに過ぎない」というASMIの研究から,この説を手術急増の要因とするのはアメリカでは少数意見となっている.
トミー・ジョン手術に至る原因として諸説挙げられていますが,①~③が密接に関わっていると考えるのが妥当ではないかと思います.
- ①:速いボールを投げることによって,肘に負担がかかる
- ②:①の肘の負担が投球数とともに蓄積されていく
- ③:投球動作が原因で肘に負担がかかる