「人」の形で打つ-大谷翔平

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村上豊氏の指摘

 日本人打者のほとんどは,打った後,前脚がすぐに離れてしまいます.MLBの打者のように前脚が残りません.なぜ,前脚が離れるかというと,「人」の形で打っていないからです

 「人」の形で打たなければならないことは,「科学する野球」の著者である村上豊氏によって,30年以上前にすでに指摘されています.右打者であれば「入」の形になります.

引用元:村上豊(1985):科学する野球・打撃篇,ベースボールマガジン社, p.121,図108,109

 「人」の形で打つ打法では,着地した前脚の膝関節を伸展することによって生み出される下肢のエネルギーを股関節を介して体幹,上肢に伝達し,鋭く体幹を回旋,後傾してスイングスピードを加速します.後傾するため,打った後,前脚が伸びたまま残るのが特徴です.

 村上氏は「人」の形で打つ際に,前脚に体重を乗せて軸として打つことの重要性を説いていましたが,運動連鎖を利用してステップに伴う運動エネルギーを次の運動へ移していくためには,着地のときに前足で前方移動にブレーキをかけなければならないので,前脚に体重が完全に移ることはありません

 日本人選手はこの「人」の形で打つ打法が身についていないため,MLBの投手の球威に力負けして,実績を残せていないのが現状です

「人」の形で打つ大谷選手-非凡な才能の持ち主

 動画を観てわかるように,大谷選手は上体を反らして「人」の形で打っています.NPBでは外国人選手以外で「人」の形で打っている打者は見当りません.

 MLBで「人」の形で打っている選手は強打者が多いという事実がありますが,成績を残していても「人」の形で打っていない打者もいます.

 皆が「人」(右打者は「入」)の形で打っている訳ではありません

 イチロー選手のように率を残すコンタクトヒッターは,長打力を求められないので,「人」の形で打つ必要はありません. 

Shohei Ohtani Home Run Swing Slow Motion 2018-11(#8)
「人」の形で打つ大谷翔平選手 引用元:https://www.youtube.com/watch?v=uOYjB3H2eOo

NPBでも「人」の形で打っていた大谷選手

 大谷選手が「人」の形で打っていることは,能力の非凡さを証明しています.この打法では,下肢のエネルギーをスイングスピードに利用できるため,飛距離が出ることが特徴です.

 この打法を身に付ければ必ずMLBで40本ホームランを打てるかというと,必ずしもそうとはいえませんが,MLBで活躍するには必要不可欠な動作といえます.

 大谷選手は当てるのがうまいので,個人的にはアベレージヒッターのほうが成功するのではないかと思います.

Shohei Ohtani 1000fps Baseball Swing Home Run Hitting Mechanics
NPBでも「人」の形で打っていた大谷翔平選手 

 大谷選手はNPBでは前足を上げてステップしていましたが,MLBでは投手の球速が速く,前足を上げると差し込まれてしまうため,少しだけ足を上げるステップに修正しています.

 動画を見ると,日ハムのときからすでにこの日本人打者にはなかなか真似できない「人」の形で打つ打法を修得していることがわかります.

 成績(打率.286,18本塁打,62打点)は別として,素質自体はすばらしいものを持っている選手といえます.

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